1.遺言書ってどんな人が書いておくべき?

多くの財産を持っている人・・・というのは誤りです。
つまり、「特に多くの財産を持っていないから自分には必要ない」という考え方は誤りなのです。

2.多くの財産を持っている人が書いておくべきという考えが誤りな理由

まず相続が開始され遺産分割をする際に、遺言書があればその内容に従って手続きをすることができるのですが、遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行い分割方法等を決定する必要があります。
そして遺産分割協議は、相続人のうちの1人でも欠けていれば法的に無効となりますし、反対する人がいるとまとまりません。どうしても協議がまとまらない場合、家庭裁判所で遺産分割の調停や審判の手続をすることもできます。
しかし、審判となると裁判官が遺産分割方法等を決定するので、必ずしも全員が納得のいく内容になるとは限りません。

裁判所の統計(平成30年度)によりますと、実際に家庭裁判所で調停や審判で成立した遺産分割事件のうち、約7割が財産価額5000万円以下、約3割が1000万円以下(5000万円以下の部分に含まれる)となっています。
この統計からも、「多くの財産を持っている人が書いておくべき」という考えが誤りだということがわかると思います。

裁判所での手続とまでなると、相当な時間や労力を費やすことになります。
このようなことを防ぐためにも、しっかりと様々な事情を考慮し、遺言書を書いておくべきなのか検討する必要があるのです。

3.遺言書の種類

遺言書の種類には3つの種類があります。令和2年7月10日から開始された自筆証書遺言保管制度を1つの種類とすると4つの種類となります。それぞれにメリット・デメリットがあるので、まずはどの種類を選択すべきなのか検討する必要があります。

  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言
  • 秘密証書遺言
  • 自筆証書遺言保管制度

4.各遺言書のメリット・デメリット

  • 自筆証書遺言
    [メリット]
    1.いつでも書くことができ、撤回・書き直し・修正・加筆もいつでもできる。
    2.費用が掛からない。

    [デメリット]
    1.遺言者本人がすべて手書きしなければならない(財産目録等はパソコン等で作成し印刷したものやコピーでもよい)。
    2.形式の不備等で無効になるおそれがある。
    3.紛失したり、発見されずに結果的に無効となる可能性がある。
    4.偽造・改ざん・破棄等をされるおそれがある。
    5.家庭裁判所での検認が必要。
  • 公正証書遺言
    [メリット]
    1.手書きする必要がない。
    2.法律のプロである公証人が作成するので、形式の不備等で無効となる可能性がほぼ無い。
    3.偽造・改ざん・隠匿・破棄等をされるおそれがない。
    4.原本が公証役場に保管されているので、紛失してしまったような場合でも無効とならない。
    5.家庭裁判所での検認が不要。

    [デメリット]
    1.公証役場へ行くか、指定場所に公証人に来てもらう必要がある。
    2.費用と手間が掛かる。
    3.撤回・書き直し・修正・加筆等をするのにも費用や手間がかかる。
  • 秘密証書遺言
    [メリット]
    1.パソコン等で作成したり代筆でもよい(自書での署名、押印は必要)。
    2.内容を誰にも知られることがない。
    3.偽造・改ざんのおそれがない。

    [デメリット]
    1.自分で作成するため、形式の不備等で無効になるおそれがある。
    2.自分で保管するため、紛失や隠匿・破棄されるおそれがある。
    3.公証役場へ行くか、指定場所に公証人に来てもらう必要がある。
    4.費用と手間が掛かる。
    5.家庭裁判所での検認が必要。
  • 自筆証書遺言保管制度
    [メリット]
    1.紛失するおそれがない。
    2.偽造・改ざん・隠匿・破棄等をされるおそれがない。
    3.費用が安く済む。
    4.家庭裁判所での検認が不要。

    [デメリット]
    1.遺言者本人がすべて手書きしなければならない(財産目録等はパソコン等で作成し印刷したものやコピーでもよい)。
    2.用紙の様式が定められていて、様式に沿ったものでないと受け付けてもらえない。
    3.形式の不備等で無効になるおそれがある。
    4.保管の申請をするために法務局へ本人が行く必要がある。
    5.書き直し・修正・加筆等をするのに手間がかかる。

5.おすすめの遺言書は?

おすすめの遺言書はやはり公正証書遺言です。
なぜなら、偽造・改ざん・隠匿・破棄等をされるおそれがなく、法的に無効となるおそれもないという点が、遺言の目的という観点から最も重要なことだと言えるからです。

せっかく遺言を残しても、それが無効になってしまっては思いを遂げることができません。

投稿者プロフィール

石﨑浩二
石﨑浩二行政書士
茨城県鉾田市の「行政書士石﨑浩二事務所」代表です。
相続、遺言、農地に関する手続き(農地法第3・4・5条許可、農振除外等)を専門とし、その他各種許認可についても取り扱っております。